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「凛」

西洋式が根付いたこの地方には珍しく和装に身を包む女剣士、凛。
父親はこの地の出身であるが母は日本の生まれという噂。
自分語りを殆どしない。
主に受注する依頼は魔物や害獣駆除であるが極稀に悪人を相手にすることもある。
獲物は日本刀。洗練された剣術を駆使したオードソックスな剣士スタイル。

「―――以上が報告です」
無精髭を生やした紳士風の男は細身の優男の報告を受け口元を緩ませた。
「なかなか順調の様ではないか。我がギルド期待のルーキーは」
「はい」
紳士風の男は恐縮しきりの優男にもう一つ質問をぶつけた。
「一度、任務に帯同したのだろう。その時の率直な実感を聞かせてくれるかな」
「はい。あれは郊外の夜道に出没し若い男を色香で陥れる悪女を倒しに行った時の事です」

まだまだ寒い3月上旬のある日の夜。
悪女が出没するといわれる農道に凛とギルドの職員である優男はやって来ていた。
「寒くないか、リアン殿」
「任務に無理を言って帯同してきたギルドの事務方にお気遣いは無用ですよ。凛さん」
「そうか」
「お心だけ有難く頂戴します」
「不思議な人だな。西洋人らしさをあまり感じない」
「よくいわれます」

他愛のない会話だったが凛の人となりが少しわかった気がした。
「リアン殿、下がって」
「!?」
どこから現れたのか農道の真ん中に一人の女が立っていた。
肉付きの良い身体に褐色と思われる肌はとても快活な色気が或る。
「今度の獲物は粉付きかい。さっさと片つけて精気をたっぷりいただこうかね」
「舐めるな悪女。私は貴様を退治しに来たのだ」
「…ッ、調子に乗ってんじゃないよ!!」

鋭利に伸びた爪を振りかざし興奮した野良猫の様にして凛に飛び掛ってきた。
(速い!これでは一般人なら一瞬にしてあいつの餌食だ!)

しかし、凛はさらに速かった。

獲物を捕らえたはずの爪は宙を切り、視線は見失った獲物を探す。
その隙を見逃す凛ではなかった。

「う」
褐色の健康そうな胸元から日本刀の刀身が生えていた。
「あ、あ…」
今まで何人もの男をたぶらかしてきた巨乳がぷるんと震える。
「あたしより速い奴がいるなんて…きいてない…よ…」
女の眼が光を失い崩れ落ちる。
まさに一瞬、いや刹那の出来事であった。

「速い」
その一言だけである。
今まで何度がギルド冒険者の戦闘を見たことはあるがその中でも圧倒的だった。
だが、それより―――
「終わったよ」
「あ、ああ」
血のりを拭き日本刀を納める。その姿は本当に美しかった。

「以上です」
「ふむ、スピードタイプの剣士か。重量タイプが多い我がギルドには願ってもない。まさに期待の星だな」
「はい」
「ところで」
「?」
「語りの最後、いやに満足げな表情だったのが私は気になるのだがね」
「!?」

ニヤニヤと薄笑いを浮かべるギルドマスターの視線を避けるようにして私は部屋を後にした。
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