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デットラインガールズ 5

「凄い勢いで減っていったねぇ」
マコがポキポキと指を鳴らしながら話しかける。
「死んだのはNo9か。それでも油断は禁物ね」
話を振られたルリは新しく探索した部屋で見つけたマシンガンを整備しながら応える。
「私の条件解除の為にはそいつと一度顔を合わせなきゃいけないって事か」
「まあ私の条件解除のためにもずっとこの戦闘禁止エリアで留まっている訳にも行かないしね」

ここは廃ビル6階の戦闘禁止エリア、エイコ一行はアプリケーションの収集を行いつつ最上階まで上ってきていた。
「しかし便利だったわね。そのアプリケーション」
エイコが便利「だった」と言うアプリケーションは『死亡者通知』
本来ならば参加人数が減った際は残り人数しか通知されないが、この機能を開放していると参加者が死亡した際その「本来の」No.を通知してくれるというものだった。

ピーッ、ピーッ
「?」
聴き慣れないアラーム音が響く。今までの警告とは違い音が高く音量も小さい。
『条件解除、No.10 他ゲーム参加者との24時間以上の帯同を確認 ミニパソコンを腕輪のコネクタに接続してください』
音声の発生源はアキの腕輪だった。
「良かったね、アキ」
マコがアキに心から祝福の言葉をかける。
「うん」
音声ガイドの手順通りに接続すると腕輪が外れる。これでアキはこの殺戮ゲームから解放されたのである。
「これでボクの条件が解除されればまた一緒に仕事ができるね」
アキとマコはコンビで依頼をこなす、要人専門の暗殺者であった。
マコの近接戦闘とマコの狙撃で依頼をこなしてきた。まだまだ甘さも残る駆け出しだが有望な新人である。
「はい、エイコ」
「ん、ありがと」
エイコは解除済みの腕輪をアキから受け取る。
「これで残りは二つね頑張りましょう。さて…これからどうしましょうか」
「今すぐに動く必要がないルリと腕輪が解除されたアキはここで待機してもらっていいかしら?私とマコが最後の一人に会いに行くわ」
「…わかったわ。気をつけて」
「それじゃ早速行こうよ。エイコ」
二人は最低限の装備を整え部屋を後にした。

エイコが6階と5階を繋ぐ階段に差し掛かったところで足を止める。
「誰かいるわね。出てきなさい」
すると階段の折り返しから女が姿を現した。
「久しぶりねぇ。エ・イ・コ♪」
「響子…」
「私に黙って急に姿を消すなんて舐めた真似してくれちゃってぇ」
「…任務を受ける度に毎回邪魔されちゃ堪らないわよ。それにあんたの仕事のやり方は大嫌いよ」
「だから言ってるじゃないどちらが優れた暗殺者か決めるまで私は貴女のストーカーを続けるわ。関係者皆殺しは痕跡を残さない最良の手段じゃない?」
「はぁ…これもそのストーカー活動の一環?」
「これは偶然よぉ。でも嬉しいわまた会えて」
二人とも表情を変えずに会話を続ける。マコにはその様子が不思議でならなかった。
会話を進める過程で違和感のないように響子に背を向ける。
(マコ、貴女は戻ってこの事を二人に知らせて、彼女は私しか眼中にないから…)
(わ、わかった)
マコは小走りでその場を後にする、響子からの追撃は無かった。
「エイコ、まだ腕輪付けてるのね。何番?」
「No.8よ。あんたには関係ないけどね」
「私はNo.5。あと一つミニパソコンを手に入れれば腕輪解除よ。どうする?」
「あんたの手を借りるくらいなら死んだ方がマシよ」
「嫌われたものね」
「お喋りはここまで。始めましょう」
振り向くと同時にエイコの拳銃が火を噴いた。

轟く銃声。
大急ぎで戦闘禁止エリアに戻ったマコが見たものは体中を撃ち抜かれ絶命しているアキの姿だった。
『条件解除、No.4 生存する全ての参加者との接触を確認 ミニパソコンを腕輪のコネクタに接続してください 繰り返します 条件解除、No.4 生存する全ての参加者との接触を確認 ミニパソコンを腕輪のコネクタに接続してください』
腕輪から発せられる音声だけが静かに響く。
「アキ…なんで?…どうして!」
「当然の事よ」
扉が開くとそこにはマコの背後にはマシンガンを構えたルリがいた。
「腕輪が外れたなら束縛もなくなって危険だし、それに…」
ルリは濁った瞳をマコに向けて言葉を放った。
「賞金が、減るじゃない」

エイコとマコが部屋を発って数分後、ルリは立ち上がりながらアキに話しかける。
「解放されて良かったわね」
「うん…ルリ、どこかいくの?」
ルリはアキが顔を向けた時にはすでに扉の前まで来ていた。
「ちょっと、お掃除にね…」
禁止エリアから体を出すと同時に振り向きマシンガンを構える。
「え…?」
「貴女達は役に立ったわ。安全な場所とそれなりの武器を提供してくれたし、でも、甘かったわね」
ルリは務めて冷静にマシンガンの引き金を引く。
「これは、殺し合いなのよ」

今、ルリの前には顔を紅潮させた黒髪の少女が立っている。
「貴女も私の糧になりなさい」
「………………………」
少女は、マコは応えない。
ルリは青髪の少女、アキを始末した時と同じように引き金に手をかける。
「!?」
ルリの目の前から少女の姿が消えた。
消えたのではない目にも映らぬ速さでルリの懐に踏み込んでいた。
「うああぁぁっ!」
鉄拳。そう呼ぶにふさわしい拳がルリの下腹部を打ち抜いた。
正確には女性器と呼ばれる部分に鋭い衝撃が走る。
「…っ…ぇ…」
声にならない。マシンガンは手から滑り落ち、濁った瞳は白目を剥いている。
「うりゃぁ!」
ゴツン!ゴツンッ!
一発、また一発と鉄の拳がルリの性器を貫いていく。
「…っ!…ぁ!…やめて…壊れッ…!死ぬぅ…」
マコが正気を取り戻した時、そこには股間を血塗れにして絶命しているルリの姿があった。

「はぁ、はぁ、ごめんよアキぃ…」
マコはアキに跪き、見開いたままの目をそっと閉じた。
「…!エイコにこのことを知らせなきゃ…あの響子って女が死んだらもう助からない!」
相方を失い、悲惨な裏切りにあってもなお、マコはエイコを助けるために部屋を飛び出した。
『救える人間を救ってこのゲームを終わらせる』
それがマコのゲームをどこかで高みの見物をしている下衆な主催者達に対する唯一の抵抗だった。

6階、階段近くでの攻防は熾烈を極めていた。
お互い手の内を知り尽くしているため迂闊に手が出せない。
しかも今回は武器も限定されている。
一種のこう着状態を解いたのはマコの叫び声だった。
「エイコっ!そいつを殺しちゃ駄目だ!」

「…エイコが死んだら元も子もないしねぇ。殺すのは私の役目だし」
響子は興が削がれたと不満顔をしている。
マコから受け取ったミニパソコンを読み込ませ5台の収集を達成する。
お決まりの音声が流れ響子の腕輪が解除された。
解除された腕輪を受け取りながらエイコは響子に問う。
「まだやる?」
「一気に殺る気が失せたわ…どっかで観戦してる豚どもの言い成りになるのも癪だしね」
「これから残り2日は戦いもなく裏切りもない、退屈なゲーム内容だからね。ある意味いい薬だわ」
腕輪を外した三人は散り散りになっていく。
これからゲーム終了までの2日余りを思い思いに過ごすのだ。

マコはアキの傍を片時も離れず過ごした。
響子はエイコとビル内で顔をあわせれば戯れに遊びとはいえない殺し合いのようなキャッチボールをした。
エイコはビル内を散策しながら過ごした。まるで何かを調べているかの様に。
たまに顔をあわせれば銃を乱射しながら追ってくる響子が迷惑だった。
「追ってくるな!邪魔よ!」
「いいじゃない~ゲーム終わるまで暇なんだから~アハハハハハハ…」

こうして規定時間が過ぎゲームは終わった。
エイコと響子の二人は賞金を得て帰路に着いた。
マコは賞金の拒否と引き換えに今後一切のゲーム参加の拒否権を得た。

13人が繰り広げた闇世界の住人の戦いはこうして終わりを告げた。

デットラインガールズ 完

デットラインガールズ 4

「…しかし今回の参加者、厄介なのがいるわね」
マキから回収した名簿を見ながら女はため息を吐いた。
剣崎のぞみ
この世界では名の知れた暗殺者。
振るう剣は最強と名高い。
「少し甘ちゃんって噂もあるけど…エイコに逢うまでには顔合わせたくないわね…」
「あ~、誰か始末してくれないかな~」そう呟きながら女は2階へと向かう階段を昇っていった。

2階給湯室、他の倉庫フロアよりやや広いここは戦闘禁止エリアと位置づけられている。
剣崎のぞみはミニPCの警告音を耳にすると肩から少し力を抜いた。
『ここは戦闘禁止エリアです。戦闘行為を行うと腕輪が爆発します ご注意ください』
「ここなら安心して休めそうだな」
木刀を壁に立てかけ座り込む。
ラフな服装に不釣合いな美しいロングの黒髪がしなる。
と同時にキッチンの方から間の抜けた声が響いてきた。
「どなたかいらっしゃったのですか~」
のぞみは少し警戒したが声の先から殺気が全く感じられない事から返事をした。
「先客がいたか。私はここで戦闘行為を行う気はない。安心して出てきて欲しい」
キッチンとフロアを分断していた仕切りの間から顔を覗かせたのは一人のメイドだった。
「そうですか~安心ですわ~今、美味しいお茶が入りましたの。情報交換をしながら一杯いかが?」
そういう女の身体からはやはり殺気は微塵も感じられない。のぞみは女と話をすることにした。
「私は剣崎のぞみ、No.は…隠してもしょうがないな、3だ」
「私は榊みゆりNo11ですわ~」
「お互い、殺しが直接な目的ではないわけか」
「ええ、よろしかったらこのあとご一緒くださいませんか~?」
「…考えておこう」
「よい返事を期待していますわ~あらあら~お茶が冷めてしまいますわよ~」
「……いただこう」

のぞみはカップに口をつけお茶を一口啜った。
「美味しい…」
「そうでしょう“自信作”ですのよ」
「みゆりは茶道か何か…!?!」

暗転。
眩暈がする。身体が痺れる。声が…出ない!

「ふふふ~まさかこんなに簡単に引っかかるなんてこのゲームも案外簡単なのかもしれませんわね~」
(毒?まさか・・・ここは戦闘禁止エリアのはず・・・?)
「もちろん戦闘は禁止ですわよ~でも“殺し”が禁止とはどこにも記載されてはいませんわ」
みゆりはのぞみの心を見透かしたように語りかける。
(しかし殺しの理由などないはずだ)
「それに私の本当のNo.は2♪うふふ~あと一人で目的達成ですわ~」
(No.11の所有者はすでに殺されていたのか…)
戦闘禁止エリアという場所と彼女自身の合わせ持つ雰囲気に流され、この緊迫した殺人ゲームの中でひと時の安心を求めてしまった。
それがのぞみの敗因だった。
のぞみの身体は小さく痙攣を繰り返しやがて静かにその動きを止めた。
条件次第では最強の存在になりえた女、剣崎のぞみはあっけない最期を迎えた。

「うふふ~ちょろいものですわ目的を達成したらここで待っていれば安心ですものね~」
彼女にはフロアを動き回り、危険を冒して武器を調達する理由もなかった。
なぜならば彼女の毛髪…美しいブロンドの髪こそが殺人の道具、毒の原料となりうるのだから。

「でも人生そんなに甘くはないのよね~」
ドン!

銃声と共にみゆりの腹部に赤い染みが広がる。
(撃たれた? どうして!? ここは戦闘禁止のはず?)
ぐるぐると思考が頭の中を駆け巡る。振り向くとそこには一人の女が立っていた。
扉の外から拳銃を構え、呆れたような表情を浮かべていた。
「馬鹿ね~部屋の中で殺しが駄目ならこうやって外から殺せばいいのに」
銃口がみゆりの眉間へと狙いを定める。
みゆりの意識はそこで途絶えた。

「お、良いの持ってるじゃん」
女はのぞみ、みゆり、そして収納に隠されていた名も知らぬNo.11の所有者からアプリケーションを抜き出す。

廃ビルの見取り図とその詳細、そして地図上には数字が動いている。
「これはミニPCの条件Noってとこね。結構偶数No生き残ってるわね~」
女は立ち上がり給湯室を後にする。

「これがあればエイコを見つけ出すのも時間の問題ね。クフフフフ…待ってなさいエイコ~今から逢いに行くからね~」

廃ビル3階の通路をコツコツと大きな音を立てながら歩く女がいた。
エイコを執拗なまでに追い続ける女はミニパソコンを見ながら狂気の持ち主の所へと歩みを進めていた。

「狙うならまずコイツよね…」
彼女が狙う獲物はNo.9のミニパソコンが表示されているポイントだった。
「エイコが殺られるとは思わないけど邪魔者は排除しなきゃね。楽しめなくなるもの…しかしこの妙な記号は何なのかしら?」
No.9の表示の右上に「‘(ダッシュ)」が付いている。
「何かを教えようとしているのかしら?」
女はその記号に違和感を抱きながらも通路を進んでいく。
「!…私より先に9ちゃんに接触しようとしてる奴がいるわね。No.5…何か策があるのかしら?」
このNo.5には‘は付いていない。

No.9とNo.5のポイントが交錯したと同時にNo.5のポイント表示が消失した。
と、同時にミニパソコンに参加者の死亡と残り人数が告げられる。
『No.5死亡、残り6名』
「またあっさりと殺られたわね…9ちゃんに何か策があると見た方がいいわね」

No.9、貴音はそのまま直進。つき当りを曲がれば女が視界に入る。
「待ち構えてあげるわ…どんな奴なのかしら」

貴音は角を曲がり女を発見するととぼけた様な声を上げた
「あら~参加者の方ですか?」
「ここに居てそうじゃなかったら何だっていうのよ」
「あらあら~そうですわね~早速ですがNoを教えあいません?」
「そっちから先に出しなさいよ」
緊張感のない女だ。だが油断はできない。
「ハイ♪私のナンバぁ~」
表示されたミニパソコンのNoは13。今は亡きアリスのNoだった。
(陳腐なカラクリね…即興にしては良くできてるけど)
'の持つ意味も理解した。
どうやらこのアプリケーション思った以上の高性能である。
Noの偽装。しかも対象となるNo.1は既に死亡しているため該当者は当然いない。
相性が悪いNo.9は自分自身。情報の少ないものならば安心して協力を求められるパターンだ。

「御生憎様。私ゃ殺人鬼とつるむ気は一切無いわ。ま、私も人の事言えないけど」
「!?」
貴音の目の色が一気に変わり、一足で間合いを取った。
背中から拳銃と素早く取り出し速射を放つ。

バスッ、バスッ。
さっきまで女の顔があった位置に銃弾がめり込む。
「やるじゃない!アンタ慣れてるね」
「暗殺者なら当然よ、お喋りはここまで。死んでもらうわ」
(サイレンサー付きか、銃声が小さいから弾丸の軌道が読み辛い。銃口の発光と手元をよく見て判断しなきゃね)
「・・・・・・・・・・・・」
貴音は無言で銃を乱射し女を追い詰める。装填も素早く隙が無い。
(悔しいけどあっちが格上ね。このままじゃジリ貧だわ)
女は辺りを見回す。
(ここは…これは使えそうね)

こと、暗殺、殺人となると貴音は驚異的な実力を発揮した。
今は亡き剣崎のぞみとの戦いがもし実現したならばそれは凄まじいものになっていただろう。
本ゲーム中でも1,2を争う実力者。その最後は唐突にやってきた。

ビーッ!ビーッ!
室内に腕輪のアラーム音が響く。
『戦闘禁止エリアでの発砲行為を確認 30秒後にペナルティを発動します』
「やられたわ。逃げ回っていたのはそういうことだったのね」
アラーム音の発信源は貴音の腕輪だった。
「アンタ、私ばかりを見ていて周りが見えていなかったみたいだしね」
女は巧みに逃げ回り戦闘禁止エリアへと貴音を誘い込んでいた。
「…最後に名前を教えてくれるかしら。私を殺したあなたの名前」
女は貴音の横を通り過ぎると振り返らずに言った。
「…響子」
「良い名前ね・・・優勝できると良いわね」
「…アンタ、強かったよ」

響子が部屋を出て数秒後、爆発音が鳴った。
最凶のNo.9はゲームのルールに破れ姿を消した。

生存者残り5人。

ミニパソコンの時刻表示が0時を回った頃、アラーム音が鳴り響いた。
『No9死亡、残り5名』

デットラインガールズ 3

「はぁ~どういたしましょう…」

廃ビルでの悪意に満ちたゲームには不釣り合いな服装の女が呟く。

メイド服に身を包んだ女の名は榊みゆり、彼女ももちろん暗殺を生業としていた。

即ち彼女もゲームの参加者なのだが彼女に直接な戦闘力は皆無だった。

二階にある小部屋に座り込み身を隠す。
(もう既にお二人が亡くなってしまったみたいですし…なんとかしないと)

ミニパソコンの画面を見つめため息をつくみゆり。
画面にはNo.2と表示されていた。

「何かないかしら…何か」
小部屋を音をたてない様にして探索する。
真新しい段ボールからミニパソコンのアプリケーションらしきものを見つけだした。

機械の扱いには疎いみゆりであったがナビゲーションに従いミニパソコンに機能を追加する。
「これは…このビルの見取り図?…それに各部屋の詳細が記載されてますわね………!これは…うふふっ、これならなんとかなりそうですわ」

みゆりは上品な言葉遣いとは似つかわない小悪魔のような笑顔で一先ずの目的地へ向け動きだしたのであった。

「フフ~ン、フンフン♪」

凄惨なデスゲームの渦中において鼻歌を歌いながら堂々と通路を歩いている女がいる。
その女の後姿を廊下の角から凝視しながらゲームの参加者の一人、乾マキは驚きを隠せなかった。
(何を考えているの…これじゃ狙ってくださいといっているものだわ)
マキは小部屋で見つけたサバイバルナイフを握りなおすと、女に攻撃を仕掛ける。

元々、暗殺者や犯罪者を集めて開かれたこのゲーム。
マキも当然腕に覚えがあった。冷静に、且つ一撃で仕留める。
油断している女の首筋にナイフの刃を突きたてる。

「!?」

マキのイメージしていた様に事態は進まなかった。
女は彼女のナイフをひらりとかわして睨みつける。

「殺気が強すぎるわね。それじゃバレバレよ」
女は冷たい目をマキに向ける。

「う・・・あ・・・」
元々、一撃離脱が持ち味のマキには相手と正面から退治する事がなかった。
今までの依頼の際も…

「三流ね…どうせ簡単な依頼しかこなしてこなかったんでしょう?」
「!!」
核心を突かれマキの身体からは冷たい汗が滲み出てきている。

「先に仕掛けたのは貴女よ。死になさい」
「くっ、うわあああああ」
マキは相手に背を向け逃げ出した。

「人を殺そうとするならそれ相当のリスクを背負わなきゃ駄目よ。拉致されてきたのか志願なのかは知らないけど勉強不足だったわね」
女はマキの頭に向けて銃を構える。

乾いた銃撃音が辺りに響いた。

「今回は彼女は来てるかしら…」
マキのミニパソコンを調べながら女は呟く。
No.は12。
アプリケーションは…
「へえ、良いモノ持ってるじゃない」
それは参加者の名簿一覧だった。

No.1から順に名前がスクロールしていく。

「!!」
女の手が止まる。
「フフフ…みつけたわぁ」

彼女の瞳には目的とする女の名前が映っていた。

御堂 エイコ

「やっと、逢えるわね…No.なんて関係ない私の手で必ず殺してあげるわ…ウフフフフ…」

女はマキのパソコンを回収すると、また鼻歌を歌いながら通路を進んでいった。

デッドラインガールズ 2

双子の姉妹は部屋の隅で身仕度を整えていた。
裏世界では残虐非道の双子と恐れられていた暗殺姉妹。
彼女達はどうしようもない事態に追い込まれていた。
姉妹の姉クリスのナンバーは⑬
そして彼女が最も愛する妹アリスのナンバーは①
最悪の組み合わせだった。
姉は妹を。
妹は姉を。
愛していた。心から。

『殺すなんて できない』

今まで虫けらの様に葬ってきた命。
姉妹は今、その重さを痛いほど感じ取っていた。

ゲームの噂は聞いたことがある。
決してそのゲームから逃げられないのならば…
姉妹は覚悟を決めた。

それでもただではやられはしない。
『私達以外総て排除しよう』
『そして静かに残りの時を過ごそう』

それが姉妹の結論だった。

「これは…何?」
アキが黒い小箱を開けるとそこにはメモリースティックらしき物が入っていた。

エイコ達は戦闘が解禁されるまでにできるだけ情報を集めておきたかった。
その為、多少の危険は承知の上で目についた部屋をしらみ潰しに探索していた。
「表面に何か書いてあるわね…“アプリケーション・ルールブック”…これがミニパソコンのアプリケーションのキーみたいね。コレ私のパソコンにインストールして良いかしら」
「元々ルリの解除条件だし反対する理由はないわ」
「早くやってみせてよ~」
エイコもマコも異存はないようだ。

ルリはミニパソコンのスロットにスティックを差し込む
『アプリケーションをダウンロード中です………ダウンロードが完了しました』
ルリがミニパソコンを再起動させると新たに項目が追加されていた。

「これは…私達が知らないルールが記載されているわね。読み上げるわよ」

『・本ゲームの舞台は国内某所の廃ビル(六階建てである)
・ビル内には侵入禁止エリアと戦闘禁止エリアが存在する
・本アプリケーションを搭載しているミニパソコンには各エリアに接近又は侵入した際に警告音が流れる
・12時間が経過するたびに一階より順に侵入禁止エリアとなる
・侵入禁止エリアに立ち入った場合30秒以内にエリア外に出なければ腕輪が爆発する
・戦闘禁止エリアで戦闘行為を行った場合、該当者の腕輪が爆発する』

「…以上よ。早めに重要なアプリケーションが入手できて良かったわね」
「戦闘解禁まであと30分もないわ…そろそろ武器とか調達したいわね。丸腰じゃ保身もできないわ」
「ルリちゃん~エイコちゃん~!」

「マコ、どうした?」
「武器はっけ~ん」

さっきから部屋を漁っていたマコの手元の段ボールには拳銃とナイフが一つずつ入っていた。
「最初の支給武器ってところかしら。振り分けはどうする?」
「ナイフだけでもあればありがたいわね」
ルリはエイコにナイフを投げ渡す。
「銃は…」
「ルリかアキが持ってると良いよ~ボクは大丈夫だから」
ルリはアキに拳銃を手渡す。
「使えるわよね?」
アキは無言で頷く。

「あとは戦いながら探索ってところかしら」
「条件が合えば仲間も増やしたいわね」

戦闘解禁まで残りわずか。殺人ゲームの幕は切って落とされようとしていた。

「!?」
エイコは胸に振動をを感じ、ミニパソコンを取り出す。
「これは…」
他の三人も同様にミニパソコンの画面を凝視している。

画面右上には黒地に赤文字で『残り11人』と表示されていた。

戦闘解禁までのカウントダウンが1分を切ろうとしていた時、双子の前に元に一人の女が姿を見せた。

「ハァイ♪お嬢さん方、少しお話しない~?」

二人は顔を見合わせる。
もうすぐ戦闘解禁だというのに無防備過ぎるのではないか?

「ねぇ~ナンバー教えてよ~一緒にお金稼ぎましょ~よ」

しかし女の無害そうな口調と無邪気な笑みに二人は気を許してしまった(実際には馬鹿なカモがあらわれたとしか思っていなかった)

「…私だけで良い?こっちの娘は訳あって条件は明かせないの」
女は表情を変えず返事をする
「構わないわよ~」

「私はNo.1、当然だけどNo.13を探してるわ」
クリスは左手でミニパソコンを提示しながら後ろに回した右手で先程入手した拳銃を握る。

「ありがとう~私のなんばぁわぁ~コレよん♪」

女が堂々とミニパソコンの画面を提示する
「!?」
背中に回した右手が一瞬硬直する。
その隙を女は見逃さなかった。

アリスのすぐ横を何か大きな塊が通り過ぎる。
それは女に眉間を撃ち抜かれたクリスの身体だった。
女はいつの間にか拳銃を構えこちらを見据えている。
笑顔を絶やさずに。

「さよならお嬢ちゃん♪」
総て殺すつもりだった。
姉と二人で殺戮の限りを尽くすつもりだった。
だがその願いが叶う事はもう無い。

銃声は響かず、ただそこにはもう動くことのない双子の身体が転がっているだけだった。

「ふふっ、準備期間にサイレンサー付きの拳銃はゲットできるし、開始直後にいきなり獲物に出会えるし、私ってついてますね~」

女は双子のミニパソコンを回収しナンバーを確認する。

「…あらあら…まあまあ~私ったら本当に…ついてますね~」

双子を一瞬の内に葬り去った女の名は岬貴音。
解除条件はゲーム中最凶のNo.9。

デッドラインガールズ 1

目を覚ますとそこは無機質な小部屋であった。

彼女、御堂エイコはまだよく目覚めていない頭で思考する。
「仕事を終えてコンビニでいつものスイーツを買って―――」
そこからの記憶が無い。

エイコはお世辞にも寝心地の良いとはいえないベッドから起き上がった。

「ん…何コレ?」

部屋脇にあるミニパソコンが鈍い光を放っている。
手のひらサイズのパソコンの画面にはワードでベタ打ちされたような一文だけが映し出されていた。

『罪深き乙女 ここに断罪と救済の機会を与えよう』
エイコは無言でパソコンの画面に触れる。
瞬時に画面が切り替わった。
どうやらタッチパネルのような仕様であった。

『ゲームの概要』
「ゲーム?」
エイコは眉を釣り上げ画面を読み進める。
『ここには貴女を含め13人の女性が居る 彼女達は貴女と境遇を共にする者 すなわち暗殺を生業とする女性である 貴女の目的はゲーム開始より3日間の期間を用い目的を達成することにある 目的達成者には10億円が分配される』

エイコは再び無言で画面を進めた。

『腕輪について』
その文章を見て瑛子は初めて自分の手首に視線を移す。
そこにはお気に入りの腕時計ではなく無機質な腕輪が付けられていた。

『腕輪にはコネクタがあり条件達成後ミニパソコンに腕輪を繋ぎ 読み込むことにより解除される 条件が達成されていないのにミニパソコンに接続した場合 また条件に反する行動を行った場合腕輪は爆発する』

腕輪にはUSBがはめ込まれていた。

エイコは画面を進める。

『解除条件一覧』
提示されている条件は以下の内容であった。
『①No.13のミニパソコン所有者の殺害
②参加者三人以上の殺害
③誰も殺害せず三日間経過(タイムアップと同時に腕輪は解除される)
④参加者全員との接触(死亡したものは除く)
⑤施設内にある全チェックポイントの通過
⑥ミニパソコンの全アプリケーション解除
⑦他の参加者のミニパソコン五台の収集
⑧条件解除された腕輪三つの収集
⑨自らを除く全参加者の死亡
⑩他の参加者と24時間以上帯同
⑪偶数Noのミニパソコン所有者の殺害
⑫奇数Noのミニパソコン所有者の殺害
⑬No.1のミニパソコン所有者の殺害』

エイコが条件を読み終えエンターキーを押すとトップ画面へと移行した。

トップ画面には『機能』『条件一覧』そして『解除条件』という項目があった。

エイコは解除条件の項目に触れた。
エイコのミニパソコンの画面中央には『No.8』と表示されていた。

「…ん」

解除条件表示と同時に画面左上にカウントダウンタイマーが表示された。

『戦闘開始まで残り57分32秒』

ミニパソコンを胸ポケットにしまうとエイコは部屋を出た。
鉄扉を開き辺りを見回す。どうやら構造的にみてここは一種の廃ビルのようだ。

「…早く条件に合う仲間を見つけないとね」

エイコはゲームの本質を素早く理解していた。
このゲームを単独でクリアすることは難しい。
相性の良い仲間を見付け一時的にでも共闘できるようにしたかった。

(最良は③ね…④~⑥も許容範囲だわ)

賞金は等分制ということもあり「裏切り」の可能性も考えねばならない。
(まあ、それは私にもいえることだし…⑨には会いたくないし、⑪には条件を知られたくないわね)

「…!」

曲がり角の先から話し声が聞こえる。
どうやら情報を交換しているらしい。

「人数は…三人」
曲がり角から様子を伺う。
「お姉さん、出ておいでよ~情報、欲しいんだろ?」黒髪の少女がエイコに声をかける。

「流石ね…」
エイコは曲がり角から集団に姿を見せる。

「差し支えなければ条件を開示してもらえるかしら?」
金髪の婦人がエイコに単刀直入に尋ねる。
「…無害だとは思うわ…出来れば先にそちらから開示してほしいわね…一人だけでも良いから」

無闇に欲を出すと交渉は進まない。
エイコはそれを良くわかっていた。

「…私は良いよ」
青髪の少女はミニパソコンの液晶をエイコに惜し気もなく見せる。
「No.10…ありがとうお嬢さん。私はNo.8、エイコよ」
「アキ…」
青髪の少女はアキと名乗った。
「次はボクだねNo.4、マコだ。ヨロシクね」
マコが液晶を差し出す。
「案外簡単に受け入れるのね」
「命あっての物種だからね。戦闘の頭数は多い方が良いさ」

エイコは金髪の婦人に視線を向ける。
「はい。名前は…ルリで良いわ」
液晶にはNo.6と表示されていた。
「幸先良いわね」

エイコは自らの強運に感謝した。

「…他の参加者には接触してないの?」
「ええ…マコの為にも戦闘解禁までに出来るだけ接触しておきたいのだけれど」
「気にしなくても良いよ~③じゃないから殺しちゃってもOKだろ」
「随分と好戦的ね」

前言撤回。
エイコは少し不安になった。
(腕輪の数を無闇に減らされても困るのだけとね)
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