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バイオレンスガールズ~死闘~

463 :バイオレンスガールズ④ :2008/11/21(金) 19:09:51 ID:3xxLB+MZ
二人の村娘の笑い声がリビングに響く。
「燃えちゃいなさい」
「灰にしてあげます」
二人が生み出した炎は渦状になって朝星達を襲う。
「お兄様!」
「うん!」
ファラは調合器具を袋から取り出すと、瞬く間に薬を作り上げる。
「やあっ」
精製された薬が入ったフラスコを炎の方に投げ入れる。
「薬術、冷凍薬!」
フラスコが炎に溶け込むと同時に凍り付く。
「!」
「な、なんてこと!」
朝星と死神が渦状の氷の中を走り抜ける。
「いただきッ!」
「さよなら」
ドグッ
「うぐっ」
ミシェルの身体に大きな風穴があく。
「ミ、ミシェ…ル」
マリーの腹部には死神の鎌が深く食い込んでいる。
「ぅぁ…」
死神は『ある異変』に気付いた。
「……!?出血が…ない」
身体機能を維持できなくなる程の重傷を負った二人の身体はボロボロと崩れていく。
「ああ、マリー」
「ミシェル…」
二人は艶やかに指を絡ませながら崩れ落ちた。
「死神ちゃんこれは…」
「おそらく…私たちと同じアンデット…」

パシィッ!
鞭特有の乾いた打音が響く。
シェラがシスターを追い詰める。
「くぅ…」
シスター姿の少女は刃を振り回し応戦するが攻撃の速さについていけない。
シュルッ
鞭の先端が機敏に動き、シスターの首に絡み付く。
「あ、あぁ…あぁあッ!」
首を絞められ、シスターは苦悶の表情を浮かべる。
「貴女達、何か知ってますわね!」
「ふふっ…行方不明者のコト…?それなら目の前にいるじゃないですか」
「!」
「誰に依頼されたかはわかりませんが無駄ですよ…貴女達もすぐに…」
ガクン
そう言うと同時にシスターの首が身体から千切れる様にして外れる。
「ふふ…誰もこの館からは逃げられない…」
サァッ……
首だけになったシスターはその一言だけを残し、砂となった。

「…これからどうしますの?」
「退路もないし先に進む…」
「ん~それしかなさそうなのだ」
朝星一向はリビングを抜け二階へと進んだ。

階段を上がり前進すると書斎らしき部屋の前に着く。
「どうやらここが最深部みたいですわね」
「なんかあっさりしすぎなのだ~」
「まるでここまで導かれてきたみたい…」
マリアは屋敷の雰囲気に恐怖を感じているようだ。
「…扉の先から人の気配はしない…」
「あれこれ考えても仕方ないのだ~」
バン!!
朝星が勢いよく扉を開く。

「待ってたよ」
「カサンドラさん…」
部屋に侵入すると二十人を超える女兵士を従えてリーダーであるカサンドラが待ち構えていた。
「ふふっ…アンタたちでもこの人数はどうしようもないんじゃないかい?」
「みんな、下がっているのだ」
朝星が一歩前に進む。
「ククッ…一人で何ができるんだい?かかれッ!」
女兵士達が一斉に朝星達に襲い掛かってくる。
ガシャッ
「朝星ちゃんNEWウェポン☆ガトリングガンっ!(銀の弾付き)」
朝星の道具袋から腕に装着するタイプの小型銃が取り出される。
「!?」
「うりゃあ~」
ガガガッガガガガガガッ
「ぁ!」
「くひん」
「きゃあ?」
頭を、腹部を、胸を打ち抜かれ倒れていく女兵士達。
「ぃひっ、そ、そこは!」
局部を撃ち抜かれ悶える兵士の姿もあった。
カチッ、カチッ
「およ、弾切れか」
ガトリングガンの弾丸射出が終わるとそこには死屍累々、女兵士達の骸の山があった。
「ふっ、楽勝なのだ」
「路銀がかなり減ってると思ったら…」
誇らしげにする朝星と呆れた顔の死神。
表情を綻ばせる兄妹とマリア。
戦闘時にはあってはならない油断がほんの一瞬、生まれてしまった。

骸の山がぐらっ、と揺れたかと思うと骸を盾にして銃撃を防いだカサンドラが飛び出してくる。
「死ねぇーっ」
高く飛び上がったカサンドラからシェラをめがけ凶刃が振りかざされる。
「シェラッ!」
「きゃっ!」
ドスッ
「ぁ…………あ…」
ぱたたっ
シェラの顔に鮮血が滴る。「お兄様ぁーーーー!」
カサンドラの凶刃はファラの身体を貫きシェラの胸の前で止まっている。
「だ、大…丈夫かい?」
口から血を流し虚ろな目で妹に優しく問いかける。
「お兄様……」
「泣かないでおくれシェラ…僕の可愛い、いもう…と…」
ファラの身体から生気が抜けていく。
冷たくなっていく身体。
「お兄様…お兄様?……いやぁあーーーーーー!」

「うおおっ!」
ゴシャッ
カサンドラの身体がモーニングスターに吹き飛ばされる。
「ぐえっ…ククッもうアンタたちは逃げられない…館とともに滅びるがいいさ」
捨て台詞を残しカサンドラは消滅する。

『まさか全滅とはね』
書斎の奥から女性の声が響く。
その女性はふわりと宙に浮いたかと思うと右手を天にかざす。
『館とともに滅びなさい。罪深き者達よ』
ゴゴゴゴゴゴゴ…
巨大な地響きとともに館が崩壊していく。
女性は薄笑いを浮かべると霧のように姿を消す。
「逃げるぞ!」
朝星が先頭になり館の脱出をはじめる。
「シェラさん!」
「…………」
しかしシェラは冷たくなった兄を抱いたまま動こうとしない。
死神はマリアの肩を抱き首を振る。
「シェラさん…」
兄妹を残し朝星達は館を脱出した。

崩れゆく館…妹は呟く。
「お兄様、私たちはいつも一緒よ…うふふ」

崩れ去った館を見つめながらマリアは問う。
「これからどうするんですか?」
「私達は旅を続ける…悲しい事もあったけどこれがギルドの仕事をするものの宿命…」
「そうですか…」
ぽん、と朝星がマリアの肩を叩く。
「村まで送るのだ」
「ありがとうございます」
館を後にする三人。
それを見つめる二つの影…
『まさか脱出するとはね』
『館を脱出できるのは罪なき者と死者の眷属のみ…あの者達もあるいは…』

『もうどうでもいいわ。早く次の館を精製しないとね、骨が折れるわ…』
陽炎は館の瓦礫に溶け込むようにして姿を消した。

「結局依頼は失敗扱いか~」
朝星が嘆く。
「物的証拠がないから…それに成功扱いにされても納得できない…」
「あの黒装束の女っ、今度会ったらギタギタにしてやるのだ!それはさておき死神ちゃん!今度の仕事は宝探しがいいのだ~」
「はいはい…」
死神は青く澄んだ空を見上げる。


―マスター、私達は今あての無い旅を続けています
貴方の願い通り戦いから離れる事は出来なかったけど
きっとどこかで見守っていてくれると信じています―
二人の旅は、続く―――

バイオレンスガールズ~始動~

「ひぃ、ふぅ、まだ着かないのか~」
「ギルドの人の話通りだともうすぐ…」
プレートアーマーに身を包んだ女戦士は黒いローブを纏った少女に愚痴をこぼす。
「まったく、なんで原因不明の失踪者探索なんて面倒臭い依頼受けたのだ~」
「誰かが人の数倍大飯食らいだし浪費家だから。いくらお金があっても足りない」
「でもでも~この新装備とおニューのプレートアーマー最高だと思うけどな~」
「黙れ」
少女が一睨みすると女戦士は萎縮しトボトボと歩きだす。
「きゃああぁーーーっ」
森に悲鳴が響く。
悲鳴の方向を見ると青髪の女性が山賊らしき輩に追われている。
「どうする…?助ければ情報聞けるかも…」
「むぅ…あまりガラじゃないけど…やるか!」
じりっ
追い詰められ怯える青髪の女性。
「や、やめて…」
盗賊たちは舌舐めずりをして女性を凝視している。
「金目のモノとアンタの未来を頂くヨ」
「やぁっ」
女性は手を掴まれ藻掻く。
「いいじゃない。同じ女なんだしさぁ。ウヒヒ」
「まったく同じ女としてなっさけないのだ」
「だ、誰だ、きゃっ!」
振り向いた女山賊の頭が鉄球の直撃を受け吹き飛ぶ。
「あぁ~マリアンヌが!」
「動かないで死にたくなければね」
女山賊は首筋に当たる刄のヒヤリとした感触に動きを止める。
「なめるなぁ!」
盗賊の一人がローブの少女に大刀で斬りかかる。
バシッ!
「!?」
茂みの奥から伸びてきた鞭が盗賊の腕を絡め取る。
「そこまでですわ」
茂みから現われたのは銀色の髪の美しい少女だった。
「無駄な抵抗はおやめなさい」
「くっ」
盗賊は大刀を地面に落とし逃げていった。
「ま、待っておくれよぉ」
鎌の刃から解放された盗賊もあとを追う様にして逃げだした。

「大丈夫…?」
「は、はい。危ないところをありがとうございました」
「礼は良いのだ。それよりも聞きたいことがあるのだ」
「は、はい」
「この辺りに古びた屋敷があるらしいけど知らないか?」
「!?」
女性の顔つきが一瞬怯えたかのように見えた。
彼女は一呼吸おいて返答する。
「ええ、知っています…でも一体何をしに?」
「ギルドの依頼…知っている事があるなら教えてほしい」
「!!」
それまで会話を静観していた銀髪の少女の顔つきが変わった。
「奇遇ですわね。その依頼なら私達も承けていてよ」
「へぇ…」
女戦士が銀髪の少女をみて口を鳴らす。
ガサ、ガサッ
「待ってよ~おいていかないでよ」
茂みの奥からどこか情けない男の声がする。
「もう、走るのが速すぎるよ…ってあれ?」
「まったくお兄様が鈍臭いのですわ」
少女が声をかけた方向から眼鏡をかけた金髪の少年が姿を現わした。
「あれ?」
見知らぬ女性が三人いる光景に驚く少年。
「さっきの悲鳴はこの人たち?」
「いえ、あそこの二人が既にならず者と戦闘中でしたわ」
「へぇ…」
わずかな沈黙の後、黒ローブの少女が青髪の女性に声をかける。
「よかったら…案内してもらえる?」
青髪の女性はすこし悩んだような表情をみせたがすぐに向き直り
「助けて頂いたお礼になるかわかりませんが…案内いたします。私はマリアといいます」
「交渉成立…私は死神でいいわ…ギルド公認の傭兵」
「物騒な名前だけど性格は根暗で良い奴なのだ!私は朝星、トレジャーハンターなのだ!」
三人の自己紹介が終わったのを見計らい銀髪の少女がある提案をする。
「ねぇ…私達同じ依頼を受けているみたいだし協力しません?報酬は2パーティーの合計をきっちり二等分ですわ」
銀髪の少女が提案する。
「私は問題ない」
「ま、楽できたほうが良いしね~」
「快く快諾してくださり感謝致しますわ。私はギルド公認の傭兵、鞭使いシェラと申します。こちらが私の兄で…」
「薬剤師のファラです。よろしくお願いします」
「よろしく…」
「よ~し!話もまとまったところで出発なのだ~」
こうして朝星一行は行方不明事件と関わりのあると噂される館に向かうのであった。
その館の名は『黒冥館』
罪深き者を誘う断罪の館とも知らずに…

黒冥館二階の書斎。
紅茶を啜りながら陽炎は視線を落とした。
『セバスチャン』
『ここに』
どこからともなくまるで霧のようにセバスチャンは現われた。
『罪深き者達が来るわ』
『トラップを仕掛けますか?』
『いいえ、彼女達を待機させなさい』
『畏まりました』
セバスチャンはまるで霧が晴れるかの様にその場から姿を消した。

『今まで感じたことのない負の力。少し骨が折れそうね』
書斎の天井を見つめながら陽炎は呟いた。

館内に六つの影がうごめく。

「ここです」
「ふぉ~雰囲気でてるねぇ」
朝星が館の物々しい外観に声を上げる。
「………」
「どうしたのお兄様?」
シェラが兄の表情に違和感を覚え声をかける。
「あ、ううん。何でもないよ」
「それじゃあ行きましょう…マリアさん案内ありがとう…」
「いえ、では…私はここで」
マリアは館に背を向ける。
ギィ、と銅製の扉が開く音が耳に届く。
「きゃあっ」
吸い込まれるようにして五人は館の中に侵入した。
バタン、とまるで扉が意志を持つかの如く閉まる。
押しても引いても開くことは気配すらない。
カタカタ…
不思議な力に巻き込まれる様にして館に入ってしまったマリアは唇を震わせる。
「マリアさん?」
「じ、実は私この館に入ったことがあるんです。昔、私は見習いでしたが盗賊をしていてこの館に逃げ込んだんですが、それは恐ろしい体験でした…館内の罠によって私以外死んでしまいました…」
『へぇ~そうなのかい』
五人全員が声のする方に一斉に視線を移す。
『ところでさぁ…その盗賊ってのは…こんな顔してたんじゃないのかい?』
リビングに突如現れた六つの影、その中央にいる三人の姿にマリアは驚き叫ぶ。
「カ、カサンドラさん、ユカさん、カオリさん!?」
軽武装を施した三人はマリアのかつての盗賊仲間とまったく同じ容姿をしていた。
他にも村娘、シスターのような姿をした者がいる。

「ここは黒冥館。罪深き貴女たちには死んでもらうわ。そして陽炎様の駒として尽くすのよ」
そういうと盗賊の三人は霧のように姿を消す。

二人の村娘が手を取りあってクスクスと笑いながら炎の輪を生み出す。
「お仕置きねミシェル」
「お仕置きねマリー」
シスターの姿をした少女が手をかざすとギロチンのような刄が生み出され、それを手に取り構える。
「悔い改めなさい」

「…マリアさんは下がって…」
「お兄様、援護をよろしくお願いします」
「久々に楽しめそうなのだ~」

ファラとマリアは一歩下がる形になり朝星、死神、シェラが前線を務める。

戦いの火蓋は今まさに切って落とされようとしていた。

黒冥館~断罪~

ここは森の中にある古びた教会。
一人のシスターが跪き十字架を見上げている。
短く整った髪に眼鏡の似合う真面目そうな少女は俯きある告白をはじめた。

「主よ、私は人を殺めました・彼女は成績優秀で誰からも好かれ愛されていました・私はそんな彼女が憎らしかったのです
彼女がいる限り私はいつもニ番目に甘んじていたのですから・ある日私は彼女を呼び出し学院の荒くれ者に襲わせました・しかし翌日も彼女は学院に登院してきました・私にもいつもどおり接してくれました
私はそれがとても癪に触り腹立たしくなりました・その日の夜・闇夜に紛れて私は彼女を襲いました・手に持った石で何度も何度も殴りました
すると彼女はぐったりとして動かなくなりました・心臓も止まっていました・怖くなった私は逃げ出しました
そして私はここに辿り着きました。私は己の行いを悔いております。どうかこの懺悔をもって慈悲を御与え下さ……!?」

少女が目を開くとそこは教会では無く古びた屋敷のリビングだった。
「え…えっ!?」
金縛りにあった状態になり身体が動かない。
彼女の頭上ににひやりとした感触、見上げるとそこにはギロチンの刃が銀色の光を放っている。 刄だけが宙に浮き彼女の首を捉えている。
「何よこれぇ!?う、嘘でしょ?」
刄は無機質に輝きを放つ。
「いやぁっ!何故?どうして!?死にたくないぃ…死にたくな!」
音もたてずに刄が彼女の首を両断する。

コロコロと転がるシスターの首を陽炎が抱き上げる。
『ふぅ、最近の子は謝ればすべて許してもらえるとでも思っているのかしら?ねぇ、セバスチャン』
『嘆かわしいですなぁ』

黒冥館~兄妹~

「はっ、はっ…」
森の中を二つの影が駆けていく。
「シェラ、手を離しておくれよ。家に帰らなきゃ」
少年は自分の手をひく少女に懇願するも少女は聞く耳を持たず無言で走り続ける。
そして二人はある館にたどり着いた。
銅製の扉が閉まり、二人は扉を背にして座り込む。
「シェラ、一体どうしたんだい。早く家に帰らなければお仕置きされてしまうよ」
金髪の少年ファラは隣で息を切らす少女に話しかける。
「はぁ、はあ…うふふ…心配することはないですわ。お兄様」
銀髪の少女シェラは笑いながら兄の問いかけに答える。
「どういうことだい」
「もうお兄様を無理矢理働かせる父様も鞭で打つ母様もいないのよ」
「え!?」
兄妹の家は荒んでいた。
父は働きもせず毎日酒場に入り浸り、兄に暴力をふるった。
母も男遊びが激しくうまくいかない事があると兄に八つ当りした。
妹には家事全般をおしつけ、未遂には終わったが売春まがいの事までもさせようとしていた。
「もう怯える必要はないわお兄様。今日の食事には猛毒が盛ってあるの、きっと二人は今頃…」
それを聞いたファラは一気に青ざめる。
「なんてことを…親殺しじゃないか!捕まったら死刑にされてしまうよ!」
「うふふ…だから逃げるのよ。お兄様…ずっと…ずっと一緒…」
そういうとファラの服を捲りあげ鞭でてきた傷口を小さい舌でぺろりと舐めた。
「あっ…」
「可哀相なお兄様。痛かったでしょう?でももう大丈夫。うふふ…」
傷口をひとしきり舐めおわるとシェラは立ち上がりリビングを見回す。
「シ、シェラ何をしているんだい」
「金目のモノを頂いてゆくのよ。幸い空き家のようだし旅の足しになれば良いけど」
「そんな、いけないよシェラ」
シェラは兄の耳元で囁く。
「大丈夫、お兄様は私が守ってあげる。ふふっ、うふふっ、あははははっ」
その時兄が見た妹の瞳は光が宿っていないどこか無機質なものに思えた。

玄関に近い小部屋の扉を開けると部屋の中央には宝箱があった。
「うふふ、幸先良いわ」
シェラは笑顔で宝箱に向かう。
兄は部屋の入り口で見ている事しか出来なかった。
「一体何が入っているのかしら」
シェラが宝箱を開けるとそこには金貨や高価なアクセサリーがぎっしりと詰まっていた。
「すごいわお兄様これだけあれば…」

兄の方に満面の笑みで振り向くシェラ。
しかし兄は驚きの表情で妹を見ていた。
いや、正確には…
「お兄様?…ぎゃあっ」
バクン
妹の背後にいるモンスターを。
シェラの上半身を鋭い牙を生やした宝箱が食い千切る。
「あがぁっ…ごぽっごぽぉお゛兄さ…ま…」
宝箱の閉じられた口から鮮血が流れだす。
ファラは宝箱に掴み掛かっていった。
「化け物め!妹をかえせ!かえしてくれよお!!」
泣き喚きながら宝箱を叩く。
ギィ、ギィ
「!」
妙な物音にファラが振り向くとそこにはどこからともなく巨大なハンマーが天井からぶら下がっていた。
ギィッ、ギィッ
ハンマーの振り子運動は徐々にスピードを速めていく。
そのハンマーの打撃面はファラの頭を捉えている。
逃げようと思っても足がすくんで動けない。
もはや下半身だけとなったシェラを抱きしめながら最後の時を待つ。
(ああ、これは神が僕に罰を与えたんだ。僕の…僕の罪は妹を止められなかった事…誰よりも愛しい妹を守れなかった事…)
ハンマーの打撃面がファラの視界を埋めると同時に彼の意識は途絶えた。

「…さま、お兄様!」
木漏れ日が心地よい。
目を覚ますとそこは森の中だった。
「起きて!お兄様!」
「シェラ…何故?僕は…生きてるのか?」
「もう、寝呆けてるの?お兄様。昨夜は森で野宿したのではありませんか。早く行かないと捕まってしまうわ」
「う、うん…」
二人は手を取り合って森を駆けてゆく。

森の木陰に二人の行方を見つめる影二つ。
『……………』
『何か不満そうだな。セバスチャン』
『…如何なる理由があろうとも親殺しは大罪でございます』
『確かにそうよ。でもあの兄妹はこの世に必要な気がするの』
『いつもの直感ですか』
『まぁ、そんなところね…何故かしら。今は罰せずとも二人はここに帰ってくる…そんな気がするわ』

黒冥館~序章~

町外れの漆黒の森。
その森の奥深くにその館は存在していた。
館の名は『黒冥館』
…罪深き者が死を誘う断罪の館…

「はぁ…はぁ」
雨の降る闇夜の森の中を四人の女盗賊が駆ける。
「おい、あれをみろ!」
「館だ!よしあそこで身を隠すぞ」
バタン
巨大な銅製の扉を最後尾の女が閉める。
「ハァ…」
彼女は扉に寄り掛かり手にした金袋を見つめる。
(このお金があれば弟は…)
「マリア」
「はい」
「初仕事にしては上出来だ。これからヨロシクな」
「は、はい…」
彼女は悩んでいた。
いくら理由があろうとも犯罪に手を染めてよいものか…と。
「これ良いねぇ」
「金になるよ」
盗賊仲間のユカとサラがリビングにある騎士像に目を付ける。
「立派な槍だね。せめてこれだけでも…」
ユカが像に手を触れた次の瞬間。
カチッ
妙な音がしたかと思うと騎士の持っていた槍がユカを一突きに貫いた。
「ぎゃあーっ」
「ああ~っユカ!今助けるからね」
サラはユカの身体を槍から引き抜こうと力を込める。カチッ
ボシュッ
「はげぇっ」
騎士像の手から槍が射出される。
槍は二人を貫通し壁に突き刺さる。
ユカとサラは無残な最期を遂げた。
「ちくしょう!」
そう叫びながら盗賊のリーダーは扉へと向かう。
しかし扉は固く閉ざされ開くことはない。
「くそっ!」
ドカッ
扉に蹴りを放つ。
カチッ
マリアの目に恐ろしい光景が映し出された。
リーダーの身体を無数の矢が襲ったのだ。
頭を、胸を、局部を無数の矢が突き刺す。
「ぁ…ぁ」
声にならない声をあげその場に倒れる。
「きゃあぁーーー!」
マリアの絶叫とともに扉が重い音を立てて開いた。
マリアはフラフラとした足取りで館を後にした。
夜はもう明けていた。

人の気配が無くなった館に二つの人影が姿を現す。
『陽炎様』
陽炎と呼ばれたのは黒装束と長い黒髪が美しい女性であった。
『何?セバスチャン』
セバスチャンと呼ばれたのは執事服を纏った初老の男性。
『あれでよかったのですか?』
『ええ…まだ彼女には罪が足りないわ。でもまたこの館に踏み込むことがあればその時は…』
陽炎は薄く笑みを浮かべると屋敷の奥へと消えていった。
『ああ、セバスチャン。いつも通り後始末お願いね』
『畏まりました』

町外れの黒き闇の森。
その森の奥深くにその館は存在していた。
館の名は『黒冥館』
…罪深き者が死を誘う断罪の館…

バタン
銅製の扉が重い音を立てて閉まる。
二人の村娘が館へと逃げ込んできた。
ミシェルとマリー、ミシェルこそ整った身なりだったがマリーの身体は鮮血に染まっていた。
「ああ、とうとうやってしまった…夫をこの手で殺めてしまった…」
うずくまるマリー。
ミシェルが優しく声をかける。
「仕方なかったのよマリー。私たちの関係がばれたら磔にされて火炙りよ」
「そうね…」
二人は女性でありながら愛し合っていた。
しかしそれは村では禁断の愛であった。
「ありがとうミシェル。少し元気が出たわ」
「そうよかった」
(フフフ…これでマリーは私のモノ…)
「あ、ミシェル寒いでしょうあそこに暖炉があるから火を点けてくるわ」
そういってマリーは暖炉に向かう。
暖炉の前に座り込み備え付けてあった火種を使い火を点けた。
カチッ
マリーのいた場所から何かがせりあがってくる。
「きゃあぁん」
それは木製の三角木馬であった。
「マリー!」
「あぁ…見ないでミシェル!」
木馬は小刻みに動きマリーの股間を責める。
ガク、ガク、ガクン
「あん、あん あはぁん」「マリー!」
「あぅ、痛ぁ、ひぃ」
目の前で悶えるマリーを助けようとミシェルは暖炉に駆け寄る。
カチッ
ミシェルが木馬に触れた時、暖炉の炎が激しく燃えあがり二人を瞬く間に包み込んだ。
「ああ~熱ぃ!マリー!」
「はぁぁんミシェルぅ!」
二人は抱き合いながら炎の中に消えてゆく。
燃え上がりゆく二人はどこか幸せそうであった。
(ああ…ミシェル…愛しているわ)
(マリー、いつまでも、一緒…よ)

二人の居た場所にこびりついたススを払い除けながら陽炎が呟く。
『歪んだ愛とは恐ろしいわ。ねぇセバスチャン』
傍らに付き従う彼は静かに頷いた。
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